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就業規則等の規定を根拠に、一定の範囲なら可能
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1.この問題は賞与支給日後に退職する予定の者がわかって
いるときに、その者へのボーナスを減額できるかという問題
です。
そもそも賞与(ボーナス)はどこの会社も必ず支給しな
ければならないものではありません。
なぜなら、法律は会社に賞与の支払いを義務づけてい
ないからです。
それでも、会社が賞与を支給するのは、会社の就業規則
などにその定めがあり、それを根拠に支払い義務を負う
ためです。
ですから、賞与を支給するかしないか、支給するとして、
誰に、いくら支給するといったことは、原則として会社
が自由に決めることができます。
2.では、すでに退職が決まっている者の賞与を減額する
ことも会社の自由なのでしょうか。この問題は賞与が
どういう意味あいを持つのかという「賞与の役割」の
解釈と関連します。
賞与にはさまざまな役割があり、大別すると
①賃金の後払い的役割
②将来への動機付けの役割
③成果を配分する役割
などに分けることができます。
もともと、賞与には過去の勤務状態・成績を評価して
賃金を事後的に支払うという①の【賃金の後払い的】
役割があります。
また、賞与には「今後も引き続き勤務し、会社に貢献して
ください」という②の【将来に対する期待や動機付け】
の役割もあるでしょう。
さらに、賞与には会社の利益を社員に配分するという
③の【成果配分的】役割も考えられます。
3.会社によって賞与の役割は異なるのは当然ですが、
多くの裁判での解釈は①の賃金後払い的役割を中心
にすえつつ複合的な役割を認定しているようです。
この点、ベネッセコーポレーション事件判決
(東京地判平8.6.28)では、賞与支給後間もなく
退職した労働者について、会社が賞与規定に基づ
いて支給額の約8割カットを求めたところ、判決は
これを認めず約2割に限ってカットできるとしました。
すなわち、このケースでは②の将来への期待・将来
の意欲の向上策という意味合いは約2割の限度で
しか認められないというのです。
ですから、賞与は基本的には過去の勤務に対する対価
であると考えられ、著しい減額は会社の裁量を超える
と判断される可能性があります。
会社としてすべきことは、賞与は②の将来への期待・
勤労意欲の向上策という意味あいで支給しているのだ
という点を就業規則で明記することです。
これを前提に、すでに退職が決まっている者の賞与を
一定範囲で減額することも認められるでしょう。
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